AIPOに参加して
パンケー老人ホーム視察

各首脳は外交で世界各国へ出かけている。今や経済や国防はグローバル化し株式市場も日本のみではバランスが取れなく、景気回復も難しくなっている。私もAIPO(ASEAN Inter-Parliamentary Organization)の総会に日本国団長として出席した(9月1日〜7日)。これは東南アジア諸国の10ヵ国とODA支援国の日本・中国・韓国・豪州・カナダ・EU連邦・ロシアなどの9ヵ国(合計19ヵ国)の国会議員の代表が一同に会して、今後の東南アジアの諸問題についてディスカッションする。詳細は省略するが、よい機会だったので当番国のバンコクの老人ホーム・障害乳幼児施設(0〜7歳)・国立病院・薬物治療センターなどを視察した。今回は特に後進国の医療整備状況を書いてみようと思う。

 タイは貧富の差が大きく医療保険は上流階級しか掛けておらず、社会保障制度は全く未熟である。私が視察した国立病院は後から考えると、最低限の医療保障をする施設で、医療費を払えない人が多く入院しているとのことだった。成る程この方が理屈に合っていると思いながら、検査室や手術室を見学したが、余りにも汚いので驚いてしまった。十分な財源がなく国立病院といえども外部の寄付を認めているのが面白い。職員はほとんど公務員で給与は日本の約10分の1(2〜3万円程度)で働いているので、アルバイトが認められている。一番気になったことは、職員は冷房の効いた所で仕事をして、患者は30人程の大部屋で冷房がなく蒸し暑い、患者にはまったく不適切な環境であった。平均在院日数は約3ヵ月と長く、余りにも1室の収容人員が多過ぎる。個人のプライバシーを問題にしないのは国民性なのかもしれない。それで患者が納得しているのかは疑問である。高度医療機器(MRI・CT)などはなく、かなりの誤診はあるに違いない。一方、民間病院の方は高度医療機器も揃っており、患者も冷房が効いた部屋でサービスを受けている。「金持ちが入院すると過剰診療をするが、アメリカ仕込みなので医療的な不安はない」と駐在大使は言っていた。この施設は時間がなく視察できなかったのは残念だった。確かに日本の施設(ハード面)と比べて外見的には遜色ないが、患者サービス(ソフト面)ではかなり遅れている。考えてみると、日本の医療は余りにも社会保障制度で庇護されており、段々とサービス低下の傾向にある。こう書くと抵抗を感じる先生もいるかも知れないが、最近の医療機関は休日や夜間は電話をしてもなかなか出ないし、休日往診もしない傾向で、患者の要求から*離しつつある。これでは医師と患者の信頼関係は薄れてしまう。医療で一番大切なのは「患者に納得された医療・介護を行う」ことで、それは患者の満足度で決まるのではないかと思う。先進国や後進国の医療提供体制のあり方ではなく、各国の患者の感じ方である。

 今後、小泉総理が「聖域なき構造改革」を行っても、医師と患者の信頼関係があれば、その"痛み"は我慢して貰えると思う。その意味では、むしろ江戸時代の「医は仁術」と言っていた方が医者らしいと感じながら帰ってきた。

>>活動紹介『東南アジア諸国連合議員機構総会に団長として参加』
に詳細なレポートを掲載しています

 

参議院議員/恒貴会・協和中央病院理事長
E-mail:kunoko@f7.dion.ne.jp

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