くのっち
【平成14年9月8日】

    党派を超えて医師として、議員として、そして人として将来の医療・福祉に対して確固たる信念を持っておられた私の尊敬する人物、今井澄先生が9月1日亡くなられた。
    今井先生は静岡出身で東大卒業の国会議員(1992年:長野選挙区・社会党選出)である。先生の一生は先ず60年安保闘争からスタートしたと思う。その後、学園紛争の中核的存在で、1968年の安田講堂占拠事件では隊長として仕切り、その判断力・決断力で先生独特の諏訪中央病院での地域医療活動の実績を生かし、1992年参議院議員に初当選した。当時は「自社さ」連立政権で、当選後早速頭角を表し、歴代の厚生大臣と共に「介護保険制度」をスタートさせた。先生の目指したニュアンスとは多少異なったかも知れないが、本質的には「患者の本当の幸せは家族に囲まれて死ぬこと」が根本にあったと感じている。ところが現実は未だもって、患者さんは施設で看取られることが圧倒的に多い。そのことにどの位腐心されていたか!思い当たる節が多い。先生が最後に委員会質問(平成14年7月25日)で行ったその時の内容に多く触れられている。私はわずか4年のお付き合いであったが、人生の恩師として深く胸に刻まれている(必要な方は水戸事務所に私の宝として最後の委員会での雄姿をダビングして撮ってあるのでお申し込みください)。
    さて、先生は2年前の胃がん発見から始まり、手術後の病状は思わしくなかったようであった。3ヵ月後には肝転移が分かり、最後の力を振り絞って、7月25日に参院厚生労働委員会で持論を蕩々と述べられた。その時の気迫は今でも目に浮かぶ。この時私は、先生はこの質問が自分の最後だと思っていらっしゃった、私自身も同じ感じでテープに収めている。その時のテープを何回も拝見した。これからは「予防医学の時代」であると強調しておられたのが印象的であった。私は予防医学が発達すれば、極端な話「介護保険」は必要ないと感じている。今後、医療費は当然高騰するが、医療とホスピスがあれば十分であると思っている。しかも家庭で行うホスピスである。勿論、医療は急性と慢性に分けて、平均在院日数は14日以内(高度先進医療と一般病床一部)、後は慢性病院で過ごし(各市町村に配置)、3ヵ月後は在宅医療で開業の先生が受け持つ。そのためには一つの医療機関で患者を抱え込むのではなく、「病・診連携」が必要であり、「病・病連携」も必要である。いわゆるあらゆる医療機関はネットワークで結ばれる必要があると思う。このようなネットワークはICカードで間に合う。電子カルテまでは必要がない。電子カルテはペーパーレスであるので、病院内には必要かもしれない。しかし、基本的には必須の問題ではない。
    さて、ご葬儀に参列して・・・先生のスマートな生き様の如く、いかにも先生のお別れの式典であった事に新たに先生の人間らしさを感じた。先生らしさと言うよりも・・・。先生が育てた周囲の人達の演出に、新たな感動を持って帰ってきた。とても温かく、単なるセレモニーではなく最愛の人を送るという心あふれるお別れ会・・・。一生忘れないであろう。
    最後に、謹んで先生のご冥福をお祈り致します・・・・・・。

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