くのっち世界恐慌・・・
【平成14年9月5日】

    今、世界的に不況に見舞われている。その中で、中国・東南アジアだけは右肩上がりの発展途上である。何故中国がその様な状態になっているかは明らかに人件費の問題だと思う。世界的に見て人件費が一番高いのは日本であろう。先進諸国よりも高くなっている。不況の原因は、人件費の一番安い所に各種産業が集中し、当国の生産業が空洞化しているからである。勿論日本も中国に産業を移住させている。これは日本の税制面に問題があるのかも知れない。
    一方大手企業(雪印乳業・日本ハム・東京電力・グリコ乳業)も一連の不祥事で株価は急落している。犯罪もつい2〜3年前とは違い、数万円で人を殺めたり、年齢も高齢化の傾向にある。また、毎日の新聞を見ても大病院の医療ミスが報道されている。国内の生産業界は人件費の安い外国人を導入しようとしているが、医療・介護に関係する業界は日本が認めた「ライセンス」を持っていないと就業できない。医療界は外国人がライセンスを取るのが最も困難な職種である。だから医療界が最も割高になってしまうのかもしれない。
    これを修正するには社会保障制度の充実であるが、それが軽視されている。老後の安心は十分な年金であるが、この年金から介護保険や新しい「高齢者医療保険」を拠出しようとしている。リストラされても不安のない生活を送るために「失業保険」があるが、この保険財源も底をついている。完全失業者数は5.4%で370〜380万人となっているが、企業のミスマッチ(給料が安い・夜勤は嫌だ)とか云って就業しないで、目一杯失業保険を使う傾向が出ている。一方、有効求人倍率は0.6程度では今後景気が良くなるはずが無い。景気とは気力の問題であり、人の心が豊かでなければ景気は絶対に良くなるはずが無い!
    今までは収入が無ければ、貧困な生活となる。ところが収入が無くとも、誰かの脛を齧っていれば、結構生活が出来るのが現代日本の世相である。何故収入が無くても生活が出来るのだろうか?その点、日本は逆に豊かなのかも知れない。世の中にはホームレスを始めフリーターとか職業のミスマッチ・トライアル雇用とか、最近はワークシェアリングいう言葉があふれている。職業についていなくても何とか生活している。それじゃ豊かじゃないのか?というと国民はその豊かさを感じていない。特にこの数年間で大きく変わってきている。これはグロバリゼーションのためなのかも知れない。大学を卒業しても、就職できず、高学歴社会も見直さなければならない時期にきていると思う。
    その意味では今迄の不況と今の株価の下落は決して同じであるとは思えない。要は人件費が高くなっているということである。物価下落は5年連続してマイナス成長で平成14年度は0.6の予想が立っている。しかし、物余りの日本で内需拡大を望んでも所詮は無理な話で、先行きが見えないトンネルの中に入ってしまった感じがする。政治や官僚でもコントロールができなくなってしまっている。マスコミの力が大きく人の意思を左右している感じもする。
    小泉総理の改革もかなり強引に行っているが、「医療構造改革」なくして「健保法改正」を断行した。本来「医療構造改革」は医師自身がやるもので、官僚や学識経験者がやるものではないと思っている。その理由は、第三者が決めると大学や国立病院などの独法化くらいしか立ち入れないからである。本来教育機関や研究機関を独立行政法人にするのは広い意味で、医療の質を落とすことになる。確かに問題が多い部分なので、これ以上は触れないが、皆が考えないと日本独特の国民皆保険は崩壊すると思う。その結果として医療機関の経営がなり立たなくなる。さて、三方一両損の論議が沸騰しているが、医師に共通した認識が無いように思えてならない。確かにサラリーマン3割負担は乱暴な話であるが、国民は病気になった時のために同じ条件で医療保険を掛けている。病気になった時には3割は自己負担であり、残りの7割は被保険者である勤労者(自分)と企業が労使折半で支払っている保険料であるということを忘れると、三方一両損の意味が分からなくなる。国を入れると国民全体の税から支払うという事になるので、全く意味不明になる。健康不安のために備えた保険なのだから、税とは切り離して考えなければならない事なのである。保険サイドから考えると、保険料を支払っているのは被保険者企業なのである。ゆえに三方一両損とは、「被保険者」「企業(事業主)」「医療提供者」の三者の事なのである。
    いずれにしろあらゆる所に色々な問題が起きている。中国が言うように、日本は放っておけば自然消滅してしまうと云われるのは勘弁願いたいものだ。日本の将来を決める問題であるからこそ、単に総理の改革を批判するのではなく、全ての人が真剣に自分達の領域(立場・ポジション)を正しく考え直さなければならない時にきていることを強調したい。

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