くのっちサラリーマンの3割負担の意味
【平成14年8月30日】

    「私の独り言」を書き始めて、久しくなるが自分でもかなり厳しいことを書いていると思っている。これに対して色々とご意見・ご叱正を頂いている。
    つい先日も大変貴重な御意見を頂戴した。私は、いろいろ率直なお考えを云って頂く事は良いことだと思っており、その様に本音の意見を交し合うと言うことは政治に関して興味を持って頂くチャンスだと思うからである。政治は開かれたもので無ければならない。この「独り言」を介して意見を交換し合うのは決して悪いことではないと思っている。

    医療保険制度は賦課方式であり、現役世代が高齢化社会を支えている。現在4人の勤労者で1人を支えているが、20年後には2人で1人を支えなければならないことになるのは避けがたい事実である。しかもモット深刻なのは、その後の時代は「少子高齢化」のあり方が少し違っていることである。即ち、女性の晩婚化が進み、しかも子供を望んで生まない様な傾向が出てきている。しかも、不景気を背景にして企業の空洞化とリストラによる企業の生き残りが進んでいる。このままでは明らかに老人医療費は足らなくなってしまう。
    現実問題として現状のままの医療保険で、既に8割の政管健保が赤字経営をしている。この原因は急速な高齢化とともに医療費が高騰しているからである。特に高齢者の医療費は顕著に伸びている(現役世代の伸びは少ない)。現状では30兆円の医療費の内10兆円が高齢者医療である(日本医師会の試算では現在の30兆円から80兆円達する)。定年になると社会保険から国民保険に切り替わる。それでは国保が破綻してしまうというので、高齢者医療費はサラリーマン時代に掛けこんでいた社会保険から「老人保健法」に基づいて、1983年から拠出金制度がスタートした。即ち高齢者が病気になった時に国保から支払う形で、社会保険の方からの拠出金で賄うようになった。ところが少子化とリストラのために社会保険はこの拠出金のために既に破綻してしまっている組合が大半となり、今年度には殆どの社会保険が値上げを要求した。
    この場合に2通りの選択がある。拠出金制度を辞めてしまうか、社会保険料を上げるかの選択である。その場合、患者に負担を受け持って貰うか、又は一般健康人の保険掛け率を上げるかの選択が更にある。患者負担3割とすれば、仮に3割負担にした場合でもサラリーマンの保険料は75‰⇒82‰になる。また、3割負担にしない場合には86‰と現在の約11%増しにしないと、成り立たなくなるという試算が出ている。しかも、今後更に上げなければならない予測もある。その他、年金や労災保険などもあり、このままではサラリーの半分は社会保険費に差し引かれてしまう。これでは普通のサラリーでは生活が出来ないことになってしまう。そこで乱暴な話であるが、3割負担を導入したのである。この法案に至る素因となる診療報酬の改定については中医協で決めた問題で、政治家には分から無い場所で決めて、既に4月からスタートしてしまったのである。
    我々与党政治家は既にスタートしてしまった問題を法律事項として認めなければならない。そこで6月に衆議院で強行採決し、7月に参議院も強行採決して決した。勿論、私も初めから3割負担については反対であった。しかし、本人3割にしたからといって医療の質が落ちるとは全く考えてない。患者を治そうとしている時に、誰でもが一生懸命になって立ち向かっていると思っている。損得で患者に医療を提供しようとしている医療関係者はいないと信じている。結果として、医療費が高いか?安いか?は患者が価値判断をするのであって、患者が貧困で困っているのなら、負担金を貰わなくても良い問題である(医は仁術)。兎に角、国民皆保険制度を如何にしたら護る事が出来るのかを決めるのが先決であると思っている。

    ところで、社会保障問題をどうしたら良いのか?今から考えておく必要がある。色々な意見はあると思うが、私個人の考え方は(HPのポンチ絵の噴出し部分)に書いてあるが、「我日本救済論」「社会保障制度の構造改革に関する提言」「社会保険制度」の中に詳しく書いてあるので参照して下さい。
    日本独特の国民皆保険を維持するにはどうした良いか?を真剣に考えなければならない時に来ている。貴方ならどう考えますか?

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