【平成14年7月30日】


 なぜ・・・負担増が必要なのか・・・

 国民の皆様が加入されている国民皆保険が破綻の危機にある。政府管掌健康保険が8年間連続赤字となっており、今年度中に積立金が底をつき、事実上財政破綻に直面しているのである。
 財政を立て直すには、本来保険料を引き上げればよい事であるが、「患者の負担増とセットで保険料の引き上げを最小限にくい止めたい」という小泉首相の意向が強く働き、サラリーマンの3割増も一緒に実施する事となった。
 今回の改正は、確かに国民の痛みが大きく負担増となるものであるが、日本の社会保障制度の存続に係わる重大な事でもある。10年・20年後皆さんの子供・孫の時代迄、社会保障制度を維持するためには、法の整備・改革は必要不可欠である。現時点の目先の事だけではなく、将来を見通した改革であることをご理解頂きたい。
 この法律の中には@現役サラリーマンの3割負担A保険料率のアップ(75%⇒82%)両者で1兆5千万の財源ができる。さらに新しくB高齢者医療保険がつくられることが盛り込まれている。
 少子化社会に向かい、医療費は確実に毎年1兆数千億円づつ上昇している。現在は30兆円であるが、10年後には倍の60兆円にも達すると試算されている。この財源をどうしたらよいのか?が問題になっている。現状のままでは「支払い基金」の8割は破綻し、国民皆保険が崩壊することになる。

@ 現役サラリーマン3割負担(約7,000億円)
 確かに若年サラリーマンは病気にはなり難い。それなのにこの部分を1割アップさせるのは理屈に合わない。それならばどの層をアップさせれば良いのだろうか。サラリーマン?高齢者?非労働者(子供を含む)?国保加入者?国?このように考えると、サラリーマンは毎月収入がある。高齢者は年金受給者で一定額の年金しか収入がない。非労働者は収入が無く大方サラリーマンの扶養控除に入っている。国が出すと言うことは税(消費税)を上げることになり、国民に負担が掛かる。国保加入者の中にはサラリーマンのOBも入っており、昔働いていた時の保険料が積み残っている。そこで1983年に「老人保険制度(=老人拠出金制度)」を導入した。定年後、国保に加入した人の医療費が嵩み、社保や政管健保などから応分負担分する制度である。高齢化が進み医療費が毎年急速に上がり、結局この拠出金のために社保や政管健保は破綻してしまった。このように考えてくると、サラリーマンから調達するしかない。さらに、現状維持で保険料を上げなければ、翌年は1兆5千億円を使い果たしてしまう。

A 保険料率のアップ(約8,000億円)
 毎年1兆円づつ上がる医療費を8,000億円程度に抑えなければならない。そのためには144国立病院、48社会保険病院やその他日赤・共同・済生会病院など非課税法人を統廃合し、また大学病院は独立採算制となった。自治体病院も存続が問われる。1972年「老人医療費無料化」以来の多重診療を抑制しなければならない。それには患者負担率を上げ、効率良い医療を提供するために「病・診連携」や「病・病連携」を促進する必要がある。当然各医療機関は減収になるが、生き残るためには患者に選ばれて来て貰えるような施設づくりが必要である。今後高齢化に比例して上がる医療費を抑えるためには、各医療機関の役割分担を効率的にする必要がある。そのために減点法が採用され、長期間の入院や過剰診療の抑制である。当然サービスの悪い医療機関は倒産する。

B 高齢者医療保険は本当に必要なのか
 その上現在の医療費を確保するために、75歳以上の高齢者のために新しい医療保険を作ろうとしている。9割税で1割患者負担であるが、その内容は5%が75以上の高齢者が年金の中から保険を掛け、患者になったら5%支払いになる。これでは益々国民負担が増える。介護保険が満杯になり、来年度からアップすることが予測されている。税を注ぎ込むと消費税か新税が増えることになる。本当に国民のための国策なのだろうか。皆で真剣に考える必要がある。但し、医療に民間企業の参入を許すと、一部地域(都心部)のサービスは向上するが、採算の取れない地域は保険外診療と医療過疎を促進する結果になる。

 現在「健康保険の一部改正案」に反対している人たちは現状維持で将来自分が高齢者になった時に、どの様な医療提供体制を望んでいるのだろうか?また医療提供者側も「医は仁術」であることを忘れずに、原点に戻る必要がある。

もどる






Copyright (C) 2001 Kuno Office All Rights Reserved.