2月19日、ブッシュ大統領の演説が参院選本会議場で行われた。内容は「世界第2次の経済大国である日本の景気低迷は世界に影響を与えている。アメリカ同様のコンペティション(競争)の原理を導入しなければならない。しかし、それにより倒産やリストラ等かなりの犠牲が出ることを覚悟しなければならない。景気回復のために、小泉総理は抵抗勢力には動じない信念を持って断行するべきであり、単なる改革ではなく明治維新時の新渡戸稲造と同じで、グローバル化した時代に即した改革を行ない、将来を見越した維新をやるべきである」と述べた。
その翌日の20日に衆院予算委員会において田中真紀子元外務大臣と鈴木宗男前議員運営委員長両名の参考人聴取が行われた。
その席で田中氏は「小泉総理が自分を更迭したのは納得いくものではなかった。自分に何もやらせなかった小泉総理こそが私から見れば抵抗勢力である」と述べた。更迭劇に至る発端は、”アフガン復興支援会議”の席に「NGOを同席させるか否か」という事である。田中外務大臣(支援会議開催当時)は出席を要請したのに対して、外務省側の判断において出席を取り止めたのである。その理由はこのNGO「アフガン難民救済のピースウィンズ・ジャパン(PWJ)―NGOの民間活動団体」が再三にわたり経理に不正行為があった(2月8日:産経新聞参照)からである。
ところが、田中氏は出席の取り止めについての理由を「鈴木宗男議員が政府を批判する団体の出席は認めないように外務省に圧力をかけて出席を妨害した」と発言したのである。鈴木議員の外務省に対する圧力の有無は別として、今回のNGO欠席の判断を下したのは、外務省の調査による不正経理の実態による正当な理由があって決断したものなのである。
アフガン復興支援会議は緒方貞子さんが事前に中東各国を訪問し、綿密な調査をなし、その結果議長としての重責を全うし、会議は成功に幕を閉じたのであるが、田中外務大臣(支援会議開催当時)の発言により、急遽予算委員会はこのNGOの出席をめぐる問題が取り立たされ、現在に至っているのである。
さて、ブッシュ大統領と田中真紀子議員の言う『抵抗勢力』とはその意味に大きな隔たりがある。抵抗勢力とは「自分の行おうとする事に対して妨害すること」を意味している。そこで、ブッシュ大統領の言う抵抗勢力とは『小泉総理の改革に反対する勢力』を意味しており、これは単に政治家ばかりでなく、国民・各種団体などもその範囲に含まれる。しかし、田中真紀子議員の抵抗勢力とは『彼女自身が思うように事が進まない。即ち自分の思うことに反対する事』と範囲が自分だけの狭いものになっている。
極端に言うと自民党内の抵抗勢力とは総理の改革路線を国民のために少しでも良くするためにその手法に反対しているのであって、基本的には小泉総理の案に賛成の旗を揚げる人達なのである。安易に反対するから抵抗勢力というものではなく、如何により良い策を見出すか検討する場を設けようとしているのである。
日本は、議院内閣制であり独裁的な政権を担うものではない。従って小泉総理の提唱する改革案を採決するのは国会であり、それには与党内の抵抗勢力の賛成は必要不可欠である。色々な手法について議論の過程を経て国民の為により良い策を講ずるのが我々国会議員の責務である。
|