治療 Vol.83,No.9 <2001.9>

  第151回通常国会が閉会し、参議院選の前に与党三党は改めて7項目の政策合意を得て、改めて連立維持を公約して選挙戦に入った、ところで、小泉フィーバーたるや凄まじいもので、アイドル的人気である。比例区票の取り合いも、タレント候補者が軒並みに顔を連ねている。良し悪しは分からないが、何となく遣る瀬無い感じがする。この記事を読まれる頃には小泉総理が靖国公式参拝をした後なので、世界的な反響も出てくることが予測される。

 それはそれとして6月12日、党本部で竹中大臣が「医療費の総枠性」を導入すると、実にクールに発言した(医療・介護の現場を知らない)。それを受けて、関係部会(勉強会)は医師会・歯科医師会・薬剤師会などの施設員が喧々誇々の意見を交えたが、夫々の立場で意見をいうので、なんともまとまらない。この内容は政府の経済財政諮問会議が経済財政運営会議の基本方針に盛り込んだ「医療費総額の伸びの抑制」について、厚生労働省がまとめた基本構想である。@抑制対象は70歳以上の老人医療費とするA高齢者の増加による自然増の医療費の伸びは認めるが、医療費などそれ以外の伸びには歯止めとなる上限を設ける。Bこの上限を超えた場合は医療機関の負担とし、医療費の抑制を図る(6月13日:朝日)と書いてあった。確かに、国民総所得(GNP=379兆円)は0.2%しか伸びていないのに、医療費が8%も伸びたのでは経済バランスが取れない。しかし、6月29日の厚生労働省の発表では平成11年度の総医療費は(対前年度比3.7%増)約1兆円増加して、過去最高の31兆円となった。内訳は15〜64歳の医療費は1人当たり16.7万円で1.5%減なのに、70歳以上の医療費は85万円で8.4%も伸びたので、高齢人口の伸び率の4%までを認め、それ以上の4%を一律カットしようとしている。これはとんでもない間違いである。そもそも、介護保険適応の療養型病床郡はまだ40%ぐらいしか認められていないにも関わらず、今年の1月から「医療法等の一部改正案」で経過措置期間として建築許可基準をクリアしていない有床診療所(今まではベットカウントされていなかった)が療養型病床郡として認められたので、必要ベット数は121万5千床なのに一気に約7.5万床が過剰になった。しかも人員基準が甘く、入院しやすいので一気にこの部分が満床になり、医療保険扱いになっている。これらの施設は2004年度までに基準に合わせて建替えないと自然消滅することになっている。しかし、借金して建替えたのでは採算が取れない。

 一般病院に罹っている高齢者の医療費までを一律に削除するようになったら、健全に運営している病院まで潰れてしまう。これをどう考えているのか?…

 今後、諸先生方と「医療構造改革について」大いにディスカッションすべき問題だと思います。宜しく御指導の程お願い致します。 


参議院議員/恒貴会・協和中央病院理事長
E-mail:kunoko@f7.dion.ne.jp

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