治療 Vol.83,No.8 <2001.8>

 絶好調の小泉内閣がスタートして早くも2ヶ月が過ぎた。5月29日、政府の「経済財政顧問会議」(議長:小泉首相)が6月下旬にまとめる経済財政運営の基本方針(骨太の方針)の原案が明らかにされ、「7つの改革プログラム」について大々的に報道している。随分思い切った改革案を出すものだと感心していたが、心の片隅には一体どのようにして?という気持ちが払拭できないからである。年金・医療・介護などの社会保障を一元化して効率化を図るとはいえ、どのような結果になるのかプログラムだけではサッパリ先が見えない話であった。

 参議院選挙を一ヶ月後に控えてのせめぎ合いで、失礼な言い方かもしれないが小泉人気が先走り、それを阻止しようとする野党との争いは”国民不在の論争”とも取れるような議論も少なくなかったが、皮肉なことに"法案の善し悪し"ではなく、内閣提出法案(森内閣提出法案)を正そうとしても、内閣批判になると色々なところから国会議員にメールが入り、「小泉さんを支持せよ!」と国民に怒られてしまう。まして選挙の前だけに、与野党の議員も黙ってしまうような変な群集政治がはびこっている。将来、国民自身が不利になると思いながらも、今の法案を早く上げて、次期国会で小泉内閣の法案審議に入らなければならないのだが、会期末を目の前に、その取りまとめで自民党の朝の勉強会で喧々諤々と揉めている。6月22日の新聞報道でも分かるように、「7つの改革」の具体案が書かれていたが、その内容はすでにご承知と思い割愛させていただく。主なものは@高齢者負担が増加するA医療費に総枠制を導入し(キャップ方式)、一般企業の参入を認めるなどが柱で、社会保障費の抑制を打ち出している。

 一方、行政側の厚生労働省は医療保険をDRG/PPS(Diagnosis Related Group/Prospective Payment System)方式にしようとしている(詳細は省略)。早急に、医療・介護提供側は発送を転換しなければならない。世界に例を見ないスピードで高齢化し、景気低迷で雇用制度が急速に変化している。今さら、先進諸国の制度を真似ても仕方ない。日本の文化と伝統を保ちつつ制度を徐々に改革していくべきだと思う。社会保障制度の充実は”社会保障費納入者を増やすこと”であり、少子化ベースで現行の保険方式を実施していくのが無理なのである。ここに工夫が必要で、発想を転換しなければ問題は解決しない。だから、年金のあり方を変更する必要があるのではなかろうか。国民基礎年金を十分に上げておいて、年金受給者からも保険料を払って貰う方が理屈に合っている(物価スライド方式が入る)。現行法式で医療費が足らなくなるからといって、年金から負担金を差し引くのではなく、年金の厚さを大きくして医療・介護費用の一部負担を無料化するという考え方である。無論、医療費も合理化する。非常に問題がある部分で、是非先生方の忌憚のないご批判を頂きたく存じます。 


参議院議員/恒貴会・協和中央病院理事長
E-mail:kunoko@f7.dion.ne.jp

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