2月12日の日経新聞に国際チーム・米セレラ社がヒトゲノムの解明結果をまとめ、ネーチャーとサイエンスの特集記事として掲載されるとあった。これにより人間の生命が延長する可能性を探求できる。また、ガン、精神・神経疾患、糖尿病、高血圧などが予防できれば、どれほどの多くの人が喜ぶことであろうか!その内容は誠に素晴らしく、政府も今回の予算の中に「メディカルフロンティア作戦」として、この種の研究を推奨する制度を盛り込むなど振興策を講じている。私は政治家であると同時に医師でもあり、医学の進歩にやぶさかではないが、医師であるが故に“自然の摂理”も大切にしたいという気持ちもある。高度先進技術の恩恵を受け人間の寿命は急速に延長したが、一方で超高齢社会をもたらし医療費の増大、社会保障費などの諸問題が少子化と重なって由々しき事態となっている。その意味ではこの大発見を単純に喜んでばかりはいられない気がする。現在約70兆円に上る社会保障制度(自助・公助・共助の精神で成り立つ)の費用は高齢社会のピーク時の2025年には約300兆円に膨らむと予測されている。現状ですでに破綻している医療費の財源を患者自己負担の増大や消費税のアップだけで賄うという発想では将来の社会不安をどうしても払拭できない。 2月27日の日経新聞に厚生労働省は「2001年度の国民医療費が5.5%増の30兆7千億になる」と発表した。介護保険の導入で、2000年度の医療費は過去最高だった1999年度よりも低下したが、2001年度は70歳以上の高齢者が60万人増え、全体として6千万円の増加の見込みという。少なくても老健施設と療養型病床群が介護保険に移行した分の4兆2千億円の一部が浮くはずではなかったのか?たった1年で再び増加ペースになるとは読みが甘かったと言わざるを得ない。しかも3月2日の日経新聞では「厚生労働省は介護の必要な高齢者の入所者一部負担金について2002年から特養で平均5万円、ケアハウスは所得に応じて月7万円〜15万円の自己負担額を考えている」という。これは国民基礎年金生活者では入所できないことを意味している。このことについて厚生労働省に聞いてみたところ何らの回答もなかった。今後、貰える年金は減り、医療、介護、さらには税金と自己負担が重くなれば医療機関にかかれない老人が増えてくる。もはや高齢者の無駄な病院通いに歯止めをかけて医療費を削減しようといったレベルではない。今後の病院・施設経営者は相当の覚悟を持って対応しないと潰れる可能性が十分に派生してくるものと思う。 |
参議院議員/恒貴会・協和中央病院理事長 E-mail:kunoko@f7.dion.ne.jp URL:http://www.kuno-k.com |