社会保障制度の一本化
治療 Vol.83,No.12 <2001.12>【最終回】

 第19回の参議院選挙は小泉人気で自民党が圧倒的に勝利し、党人事も大きく変わった、私も厚生労働大臣政務官に任命された。余りにも急な話で、私の国会レポートも、今回で終わらざるを得なくなった。長いこと『治療』を読んで下さっていた先生方には誠に申し訳なく思っています。 
 昨年の国会から行政改革の一環で、立法府として与野党の政治家同士が法律を作っていくべきであるとの意見が出始め、大臣・副大臣・大臣政務官の制度が導入され、省庁を約半分の12省庁に統合した。厚生省は労働省と合併し、厚生労働省となり、大臣が1人になった。しかし、1人では十分に目が届かないので、専門分野(厚生と労働)の副大臣が置かれ、それぞれの立場で頻繁に連絡を取り、従来の縦割り行政の弊害をなくそうとしている。国会が始まると、大臣・副大臣は答弁に廻り、いろいろなセレモニーには出席できず、今回のテロ行為や狂牛病などの危機管理体制で大臣が拘束されると、大臣の代理出席したり、また与野党の対立法案で委員会が混乱したときの調整役をするのも大臣政務官の仕事である。要は使い走りなのだが、大臣の代読をするようになるので、今までの1議員のときと違って、自分の言葉が大臣発言と誤解される可能性もあり、執筆も控えなければならないことになる。
 ところで、小泉総理が80%以上の支持を得たのは、現在の「日本のあり方」を変えて欲しいという国民の強い欲求の現れで、「聖域なき構造改革」で景気回復を願った結果だと思う。だから、この改革により自分達が今よりも酷い状態になるとは考えてない。ただ単に行財政の合理化を求めているだけである。それでは行政・立法・国民が同じ「痛み」なら了解するかと考えると、必ずしもそうではない。今回の医療制度改革も”医療サービス提供者と患者が平等に「痛み」を分かち合う方法”でなければ国民は納得しないと思う。現場を知らない行政・立法が単なる数字合わせをした「医療構造改革」ではダメで、結論として、これからの医療界に求めているのは全人的な医療である。健康な人はいつか病気になり医療機関にかかり、そして慢性化すると介護の世話になる。患者は個人でありすべての各施設を利用する可能性がある。その個人に各施設がどのようなサービスを提供できるのか?が問題であり、これを医療・介護・福祉の面からのみ考えて、負担増をしたのでは患者は納得しない。また、安心した老後を過ごすには一部負担金に見合った分を最低限保障する年金体制を作らなければならない、すなわち、年金と医療・介護・福祉の1本化こそ国民が願っている「痛み」だと思う。それは、政治が決める問題だと思うだろうが、それは違う。大変失礼な言い方かもしれないが、多くの団体が族議員を作っている状態では解決しない。要はすべての人が「自分の老後はどうあるべきか」を真剣に考え、「貧富の差を超越した老後のあり方」を考えなければ答えは出てこない。自分だけ良ければ・・・という発想では国民は負担を受け入れないと思う。以上が私の結論で、今回で連載を終わります。先生方の御指導、御意見有り難う御座いました。


参議院議員/恒貴会・協和中央病院理事長
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