小集団でのアクティビティーリハビリの実践
〜活動から役割・趣味へと〜
医療法人 恒貴会 介護老人保健施設 協和ヘルシーセンター
黒田 順互、植木 佳美、山中 淳美、吉原 由記
通所リハビリ利用者様に対し活動状況調査を実施し、その結果をもとに小集団でのアクティビティーリハビリを実施しました。症例を通じ、通所リハビリの効果的なリハビリについて考察したことを報告します。
【はじめに】
廃用症候群の予防には、活動性を維持・向上させることが必要です。起床から就寝までの生活時間の中で、セルフケアに費やされる時間は約2割に過ぎません。残りの約8割の時間は、役割活動、娯楽・趣味活動に費やされる時間です。この生活時間の8割を占める時間にどのような活動ができるかを考え、提供できることが介護保険制度の下でのリハビリの役目であると考えます。今回は、当施設通所リハビリ利用者様に対し、自宅における活動状況調査を実施しました。その結果をもとに、小集団を形成しアクティビティーリハビリを実施し、役割活動、趣味活動を再獲得することができた症例を通じ、通所リハビリでの有効な取り組み方法について考察したので報告します。
【方法】
(1)通所リハビリ利用者に対し、病前・現在・今後の希望についての活動状況を調査しました。
(2)調査結果をもとに、共通の趣味と同様の疾病を有した利用者で小集団(2〜3名程度)を形成しました。
(3)作業療法士指導のもとで介護職員と協働し、アクティビティーリハビリを実施しました。
【ケース紹介】
(1)家での役割はズボンの裾上げ
脳梗塞後遺症により片麻痺を呈した利用者3名で小集団を形成し、共通の趣味である刺繍を実施しました。利用者の麻痺のレベルは廃用手レベルであり、片手での作業となります。生地の一端を文鎮で固定し、表裏を交互に返しながら糸を通していく方法により、運針という技術で模様を作っていただきました。
症例:図表1参照
図表1の利用者様は刺繍という活動を通じて、左手で行う針仕事の技術を獲得することができました。これにより、病前の役割であった「家族のズボンのスソ上げ」という活動を家庭の中で再獲得することができました。「家事をやりたいという気持ちはあるが、夫に迷惑をかけたくない」という心身状態から、「左手での作業に自信がついた」ことにより、「更なる家事への参加をしたい」という心身状態へと変化が見られました。
(2)毎日の日課は俳句作り
頚髄損傷により、四肢不全麻痺を呈した利用者2名で小集団を形成し、書字練習を実施しました。手で鉛筆を把持しての書字は困難であったため、自助具を作成し書字練習を実施しました。
症例:図表2参照
図表2の利用者様は、自助具を利用しての書字の技術を獲得する事ができました。これにより、病前の趣味であった「俳句作り」という活動を、毎日の生活の日課として再獲得することができました。「日中起きていても何もやることがない」という心身状態から、「リハ・ケアプランを自分で目を通し、サインをしたい」という心身状態へと変化が見られました。
【考察】
今回ケース紹介で実施した活動は障害を有した高齢者にとっては非常に難易度の高い活動でした。しかし、共通の趣味、同様の疾病を有した利用者で小集団を形成して活動を実施することにより、お互いに励まし合い、活動への意欲の向上がみられ、難しい課題も克服することができました。また、目標を明確化してアクティビティーリハビリを実施することにより、自宅での役割活動・趣味活動を獲得することができました。通所リハビリの役割は、通所リハビリでの活動から在宅での活動へとつなげ、在宅生活を活動的に過ごしていただくことにあると思います。環境因子(一緒にやる友人がいる)を調整し、目標を明確化したアクティビティーリハビリを実施することにより、活動・参加を増やすことができ、それにより心身機能を改善することができる。これは通所リハビリの特徴を利用できた効果的なリハビリの方法であると感じました。
図表1.家での役割はズボンの裾上げ
図表2.毎日の日課は俳句作り
|前へ戻る
|上へ| |